細胞診

細胞診検査

肺がんや膀胱(ぼうこう)がんでは、痰(たん)や尿の中にがん細胞が混じることがあります。や尿を顕微鏡で調べてがん細胞がいるかどうかを判断するのが細胞診断(いわゆる「細胞診」)です。子宮がん検診では、子宮頚部(けいぶ)から細胞をこすりとって調べます。のどや乳房などにしこりがあると、細い針を刺して吸引し、とれた細胞の中にがん細胞がいるかどうかを調べる場合もあります。

(社)日本病理学会「病理診断ってなあに」より引用

細胞診検査の流れ

  • 細胞診は、検査材料をスライドガラスに塗抹し染色したものを、細胞検査士が顕微鏡を用いて標本のスクリーニングを行い、異常細胞の有無を調べます。原則として疑陽性以上の病変はすべて専門医の診断を受けて最終結果とします。
  1. 受付
    検査材料と検査依頼伝票を受付します。検査材料の種類(表)によって提出方法が異なります。
  2. 標本作製
    検査材料の種類によって、塗抹法(すりあわせ法や引きガラス法)、集細胞法を行っています。
    • 子宮頚部標本作製には当センターではLBC(Liquid-based Cytology)法を採用しています。LBC法とはブラシで採取した細胞を直接保存液に回収したのちに、塗抹を行う方法です。ThinPrep5000プロセッサ(米国 Hologic 社製, 発売元オリンパス株式会社)を導入しています。
    • 尿検体についても2016年4月からLBC法のCellprep(BIODYNE JAPAN社製、発売元ロシュ・ダイアグノスティックス社)を導入し、がん細胞をより高率に検出するようにしています。
  3. 固定
    固定は蛋白を凝固させ、細胞の変性・融解を停止させる操作で、塗抹後直ちに行う必要があります。
    湿固定
    作製した標本をすばやく95%エタノールの中に入れるか、コーティング固定剤をかけます。細胞診において基本となるパパニコロウ染色に用います。
    乾燥固定
    塗抹した標本をドライヤーなどで冷風乾燥させます。必要に応じてギムザ染色やPAS染色などに用います。
  4. 染色(パパニコロウ染色、特殊染色)
    • パパニコロウ染色は細胞診において基本となる染色です。
      湿固定した標本を、ヘマトキシリンで核を青紫色に、OG-6とEA50で細胞質をオレンジやライトグリーンに染め分けます。
      自動染色装置で染色をしています。
    • 細胞剥離が多い液状検体(体腔液やリコール)や造血器系腫瘍の診断時には、乾燥固定した標本も作製してギムザ染色を行い、パパニコロウ染色とあわせて診断をしています。
  5. 細胞検査士による鏡検
  6. 報告書作成

HPV検査について

ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus:HPV)は、子宮頚癌や頚部異形成の約90%に検出されています。また、発癌過程において、密接に関与していることが明らかになりました(下図参照)。

HPVには多くの種類があり、現在では100種類近くが発見されています。子宮頚癌になりやすいかどうかは、HPVのタイプによって異なり、子宮頚癌になりやすいものを中~高リスクタイプ、なりにくいものを低リスクタイプとして分類しています。(表1)

表1 HPVの分類とタイプ
分類タイプ名
高リスク 16型、18型、33型、35型、45型、51型、52型、56型 など
低リスク 6型、11型
  • HPV検査:通常の子宮頚癌検診(細胞診)と同じ、子宮頚部の細胞を使ってHPV-DNA検査を行います。HPVに感染しているかを調べるスクリーニング検査と、どの型に感染しているかを調べるタイピング検査があります。(表2)
表2 ヒトパピローマウイルスタイピング解析
HPV核酸同定検査HPVタイピング解析
目的 高リスク型HPV感染の有無と
感染型別の検索
高リスク型HPVのタイプを判定
検査方法名 HPV-DNA高リスク型/Invader法 HPV-DNA型判定/PCR-rSSO法
検出可能な
HPVの型
高リスク型の内、16,18,31,33,35,39,45,
54,52,56,58,59,66,68の14種類
高リスク型HPVの内、16,18,31,33,35,39,45,51,
52,56,58,59,68型
検査結果 リスク度の異なる3群に分けて検出し、報告する。
A5/A6:51,56,66
A7:18,39,45,59,68
A9:16,31,33,35,52,58
上記のHPVのタイプを特定可能
保険点数 実施料 360点 注1)
微生物学的判断料 150点
実施料2000 注2)
微生物学的判断料 150´
検査日数 3~5日 3~6日
  • 注1 細胞診がASC-USと判定された患者に対して行った場合に限り算定されます。細胞診と同時に実施した場合には算定できません。
  • 注2 生検によって確認されたCIN1またはCIN2の患者に適応されます。

正常な細胞が子宮頸がんになるまで


写真1 正常な細胞

写真2 HPVに感染した細胞

写真3 癌化した細胞

採取した細胞を顕微鏡で見ると、正常細胞(写真1)、HPV感染を疑う細胞(写真2)、癌細胞(写真3)がわかります。

子宮頸部液状化細胞診自動標本作製装置の導入(Thin Prep 5000 プロセッサ)

当センターでは、2010年4月1日からの子宮頚部液状化細胞診実施に伴い、細胞診標本を全自動で作製する「Thin Prep5000プロセッサ」(写真1)を中四国エリアで初めて導入いたしました。アメリカHOLOGIC社製で、FDA(アメリカ食品医療局)が認可している装置です。

Thin Prep5000プロセッサで作製した液状化細胞診標本の特徴

  1. 検体容器の開閉から標本作成まですべてを全自動で行います。
  2. 短時間のうちに作製されます。(20検体が約40分)
  3. ブラシ採取による液状化細胞診を実施した場合、従来の方法に比べ異型細胞(特にベセスダ分類でHSIL以上)の検出率が高く不適正検体が少ないとされています。1,2)
  4. 採取したすべての細胞の中から、均質で重なりの少ない標本が作製できます。

    また、複数枚の標本作成も可能です。
  5. 全自動のため検体間のコンタミネーションがなく、細胞診標本作製後の残液で、HPV核酸同定検査、HPVタイピング解析の追加が可能です。
  6. 当センターの細胞診専門医、細胞検査士は全員Cytyc社ThinPrep法の研修コース(17時間)を修了し、同社による認定を受けておりますので、精度が高い細胞診判定をご報告をすることができます。

参考文献

  • 1)冨沢一与・他:子宮頚部細胞診の採取法および標本作製法による比較検討.日赤検査42:44-49,2008
  • 2)赤松節・他:子宮がん検診における細胞採取器具の評価.日臨細胞誌43(3):63-68.2005