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貧血について―鉄欠乏性貧血を中心に―

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健康チェック

福山市医師会が毎月お届けする、あなたの健康チェックのためのコラムです。


NO28
2000年10月号
貧血について―鉄欠乏性貧血を中心に―


福山市医師会
宮田 明
(内科)


◆貧血とは? 

人の細胞が生きて行くために必要な酸素は、肺で血液中のヘモグロビン(血色素)に結合して体中の組織に供給されますが、貧血とは血液中の単位体積あたりのヘモグロビン濃度が減少した状態を指し、組織への酸素供給不足から色々な症状を引き起こします。すなわち顔色が蒼い以外に、息切れ、動悸、疲れやすさ、肩こり、頭痛、さらに食欲低下などの症状が出てきます。貧血は原発性貧血と、他の病気によって引き起こされる続発性貧血に分けられます。原発性の原因は簡単に分けますと①体内の鉄分が欠乏して起きる鉄欠乏性貧血、②ビタミンB12や葉酸の欠乏により起きる巨赤芽球性貧血、③赤血球の寿命が短くなる溶血性貧血、④血球の元になる骨髄中の造血幹細胞の異常や、骨髄での白血病細胞の増殖などにより起きる骨髄障害性貧血、に分類されます。今回は紙面の制限もあり、貧血の原因の90%以上を占める鉄欠乏性貧血について述べたいと思います。

◆鉄欠乏性貧血について 
WHOの統計によると世界の人口の約30%が鉄欠乏性貧血だそうです。また日本赤十字社の調査からも男性の0.5%、女性の12.7%が鉄欠乏性貧血であるとも言われています。

<原因>
ヘモグロビンは簡単に言うと酸素を結合するヘムという物質とグロビンという蛋白質が結合してできていますが、ヘムの合成には鉄が必要です。鉄は人体内に約4g含まれておりその約3分の2がヘモグロビン鉄で、残り1gは主に貯蔵鉄で他に少量が血清、筋肉、酵素に含まれます。

体内の鉄の需要と供給のバランスが崩れた時
、鉄不足となり進行すると鉄欠乏性貧血に陥ります。体から失われる鉄の量は成人男子では1日約1㎎ですが、生理のある女性は生理の出血による鉄の喪失(血液1ml中0.5㎎)がそれに加わり1日2㎎以上の鉄が失われます。食べ物からの鉄の吸収量は1日多くても2㎎ですので成人女性は需要と供給がぎりぎりの線にあるわけです。これが成人女性に鉄欠乏性貧血が多い理由です。

特に中年女性で子宮筋腫などの婦人科疾患で生理出血が増加した場合には容易に貧血になるわけです。男性では痔や消化性潰瘍などで長期に出血が続いた場合に、高齢者の場合は消化器の癌による出血による鉄欠乏が多いようです。また成長期には体重が飛躍的に増加するため鉄の需要が増え、女子ではそれに生理が加わると更に鉄欠乏になりやすくなります。妊婦は胎児に鉄を供給するため余分に鉄が必要で、授乳中にも鉄が余分に必要です。

以上、需要が増える原因を述べましたが、吸収が低下する原因として一番多いのは胃の手術後の貧血です。これは胃液が酸性でなくなるため鉄の吸収率が低下するために引き起こされます。もう一つは食事中の鉄分が少ない場合です。一般に植物性食品よりも動物性食品のほうが鉄の含有量も多く吸収率も良いとされ、特に肉や内臓等血液を沢山含む食品中のヘム鉄の吸収が良いとされています。若い女性などが無理なダイエットで偏食する事は貧血の原因になります。

<治療>
まず鉄欠乏を起こす原因があればそれを発見し治す事が重要です。貧血に関しては鉄剤を服用すれば良いのですが、気を付けなければならないのは一旦貧血になった場合はいくら鉄分の多い食事をとっても貧血は治りません。お医者さんが良いというまで鉄剤を服用する必要があります。1日2~3錠で1日の造血に必要な鉄分は十分です。貧血は重症でも3~4ヵ月で回復しますが、回復しても貯蔵鉄を回復させておかないとすぐ再発する事がありますので、更に2ヵ月ほど鉄剤を内服しておいたほうが良いとされています。

商工ふくやま2000年10月号掲載