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増加するアレルギー症状の子どもたち

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健康チェック

福山市医師会が毎月お届けする、あなたの健康チェックのためのコラムです。


NO33
2001年3月号
増加するアレルギー症状の子どもたち


福山市医師会
池田 政憲
(小児科)


 今や子どもたちを悩ませている病気の中で一番多いのが、このアレルギー疾患です。アレルギー疾患と言えばアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎アレルギー性結膜炎そして蕁麻疹など種々ですが食物アレルギーの子どもたちも現在増加の一途を辿っています。

 アレルギー症状を持っている子どもたちがどれくらいいるのか、厚生労働省の調査では0歳~14歳の子どもたちの約40%に、東京・大阪など都市部に住む4歳以下の子供たちに至っては51.5%つまり2人に1人の割合で何らかのアレルギー症状が認められるというのが最近の状況です。昔と比較すると学童の気管支喘息はこの30年間で10倍に、アトピー性皮膚炎も5~10倍に増加しています。

 ではなぜそんなにアレルギー疾患が増えたのでしょうか?それは私たちをとりまく環境が大きく変わったことによるのです。アレルギー体質は遺伝的に代々伝えられるものですが、アレルギー疾患として症状が現れるか否か住環境、食環境、大気汚染など生活環境から受ける刺激が重要な鍵を握っているのです。たとえば住環境の変化、昔は木造に土壁ですきま風が通るような家に日本人は住んでいました。それが高温多湿の日本の気候には良く合っていたのです。ところが今はマンションだったり、木造の家屋でもアルミサッシが入って機密性が高くなっています。そして夏は冷房、冬は暖房で年中快適に過ごせるようになりました。実はその快適な環境というのは、家ダニたちにとっても好都合でどんどんダニが家の中で増え、一年中人間がダニと共に生活するようになったのです。このダニが子どものアレルギーを引き起こす大きな原因で、たとえば気管支喘息の子供たちを調べると100人中94人までがダニに対するアレルギー反応が原因となっているのです。普通どこの家でもホコリをゴルフボール位の大きさに集めると、目にははっきり見えませんがその中に家ダニが約4,000匹居ると考えられています。アレルギー症状のある子どもさんのお家では、絨毯やカーペットは禁物です。畳や床に掃除機をかける時にも1㎡当たり20秒以上の時間をかけて十分にホコリを吸い取ることが大切で、寝具も日干しか布団乾燥機にかけた後同様に掃除機をかけるのが環境整備のポイントです。

 食環境の変化とはどういう意味でしょうか?古くから卵、牛乳、大豆は食物三大アレルゲン(アレルゲンとはアレルギーを起こす原因となる物質)と呼ばれてきましたが、私たち日本人はこれらの食品を食べる機会が非常に多くなりました。特に妊娠中、授乳中にお母さんがしっかり栄養を取ろうと、卵や乳製品をたくさん食べるといったことも少なくありませんし、離乳食を食べる頃の消化機能の未発達な赤ちゃん達も最近は結構早い時期から、卵などのアレルギーを引き起こしやすい蛋白質をたくさん食べるようになりました。これも、乳幼児期の食物アレルギーをはじめとするアレルギー疾患が増えてきた要因です。アレルギーの素質が考えられる赤ちゃんには卵の開始時期を遅らせることも意味がありますが、食物除去を行う時には医師と相談することがとても大切です。基本的に特定の食品に偏らず、食物をバランス良く食べていく、大人でも子どもでも例えば1日20品目とか30品目を食べるというふうに、色々な食品を食べる中の卵であったり乳製品であったりといった配分も、とりわけアレルギー体質のある家庭では大切なことです。
  
 国民病とか文明病と呼ばれるようになったアレルギー疾患。生涯アレルギー症状を持ちつづける場合も少なくありません。できるだけ早期に、症状の軽いうちに治療を開始し、正しい知識を持って徹底的に立ち向かうことが脱出のコツです。子どもたちの生涯の病気としないようにしたいものです。

商工ふくやま2001年3月号掲載