マムシ咬傷

イラスト

健康チェック

福山市医師会が毎月お届けする、あなたの健康チェックのためのコラムです。


NO36
2001年6月号
マムシ咬傷

福山市医師会
宮庄 浩司
(麻酔集中治療科)


 日本の陸にいる毒蛇は、ハブ、マムシ、ヤマカガシの3種類が代表です。このうち本州にいるのはマムシとヤマカガシですが、毎年6〜7月田植えの時期や草刈の時期、そして9〜10月の稲刈りの時期におこるのがマムシによる咬傷です。一度咬まれるとやはり注意するのでしょうが2度咬まれた人も結構おられました。マムシ咬傷についてはいろいろの民間治療が言い伝えられており、私も幼い頃、咬んだマムシの皮を剥いでその肉を咬傷部に当てれば治ると言うような話を伯父に聞いたことがあります。

 ともあれあまり出くわしたくない蛇ではあり、当然みなさん注意をしているので、わざわざマムシをわかっていて咬まれるはずはありません。ほとんどの患者さんは「あ!!?」と、思ったときには既に咬まれていて、がさごそ逃げる蛇の模様を見てマムシと認識するようです。従って草むらで特に蛇の出そうなところは、ゴム長靴の着用を心がけ、不用意に草むらに手や素足を入れないことです。まずは予防にしくはなく。が、咬まれてしまっては治療をしないと老人、子供は言うに及ばず、屈強な男子でも悪くすると命を落としてしまいます。

 咬まれた場合、まずは、咬まれた部分から1関節中枢部分(身体に近い方)を駆血して(縛って)病院を受診してください。それにあわてて走ったりしないことが大切で、以前40代の女性がマムシに咬まれあわてて階段を駆け上がり、スクーターで病院へ駆けつけてこられましたが、このように運動すると血流が増し、マムシ毒を全身へ運ぶことになり危険です。もう一つ注意をすることはマムシに咬まれても頭皮などは以外とマムシ毒が入っていないこと、または非常に少量のことがあります。このような場合にはむしろマムシ咬傷よりも不潔な歯牙による感染や破傷風などに注意を要します。

 マムシ咬傷の治療法としては、まず第一に局所療法として咬まれた部位からの汚血の体外への破棄また不潔な歯牙による咬傷なので局所の消毒は言うに及ばず、破傷風対策として破傷風抗毒素の投与、局所の冷却が行われます。
 マムシ毒は出血毒ですが、噛まれた部位をはじめとし驚くほどの浮腫が中枢側に向かって起こり体内の水分がそちらへ移動するため血管内脱水となります。そのため、速やかに大量の点滴を行うことが非常に大切です。これを行わないと脱水のため腎不全になり死に至ることもあります。
 
 また、マムシの抗毒素療法としては、"タマサキツヅラフジ"という植物からとった成分とウマ抗マムシ抗毒素血清の2つがありますが、さて、このどちらを選択するか?
 
 以前中毒研究会での日本蛇族研究所の所長の発表では、マムシ毒に対する抗毒素の作用は生体系での実験で、抗毒素血清が優れているという発表があり、また、マムシ咬傷患者にたいし抗毒素結成を使用せず死亡したことで法的に問題となった大学医療機関もありました。私自身は、体内にマムシ毒が入って浮腫がひどい場合は、抗毒素血清を使用すべきと考えて投与しています。

 マムシ咬傷は救急分野では基本的分野であり、噛まれたら速やかに救急指定病院を受診して治療を受けることをお勧めします。 


商工ふくやま2001年6月号掲載