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アルコールについて

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健康チェック

福山市医師会が毎月お届けする、あなたの健康チェックのためのコラムです。


NO.62
2003年8月号
アルコールについて

福 山 市 医 師 会
こばやし みちお
小林 道男
(内科)

 古来より酒は百薬の長として人類に親しまれてきた。アルコールを適量飲む人が大酒を飲む人よりも長生きするのは当然としても、全く飲まない人よりも長生きするといった統計も最近報告されている。しかし一方で、アルコール中毒となったり、アルコール性の肝障害を起こしたりする。アルコールが体に入ったあとどのように処理されるのか考えてみよう。アルコール、即ちエチルアルコールは飲酒後、肝に運ばれて、まずアセトアルデヒドに酸化される。アセトアルデヒドは非常に毒性が強く、いつまでも肝に残っていると肝臓を傷めてしまう。幸いすばやく処理できる仕組みが備わっており、アセトアルデヒドから酢酸、すなわち「酢」へと更に酸化され、酢酸は更に代謝されて最終的には水と炭酸ガスになる。もう少し詳しく見てみるとエチルアルコールをアセトアルデヒドに処理するのはアルコール脱水素酵素という酵素蛋白がこの反応をつかさっどているが、更にマイクロソーム・エタノール酸化系という別の処理機構でも処理される。このマイクロソーム・エタノール酸化系はアルコールを飲み続けると次第に処理能力を増す性質を持っている。したがって最初はあまり酒に強くなかった人が、周りから飲まされているうちにいつのまにか、大酒を飲んでもけろっとしているといった事がおこる。更にこのマイクロソーム・エタノール酸化系はアルコール以外のものも処理する働きをもっている。大酒飲みはこのシステムが活性を増して、一部の薬をすばやく処理してしまうので、例えば必要な薬を使っても大酒飲みにはなかなか効かないといった事がおこる。

 アルコールが代謝されてできるアセトアルデヒドは非常に毒性が強く、このアセトアルデヒドをすばやく処理する能力を、人類に授けてくださった神に酒好きな方は感謝を忘れてはなりません。この毒性の強いアセトアルデヒドを安全な酢酸に変えるのはアセトアルデヒド脱水素酵素という酵素蛋白の働きによります。このアルデヒド脱水素酵素は遺伝子の多型性があり、一部が変異したものは非常に活性が低く、猛毒のアセトアルデヒドをなかなか処理できないため、チョットお猪口一杯、むりやり飲まされると顔が真っ赤になり、それ以上は飲めないという人がこれに相当する。このような人は我々日本人を含めたモンゴロイドのみにみられるもので、西洋人にはいません。外国映画を見ても西洋人がグラス一杯で顔を真っ赤にして......というシーンはお目にかからないのはこういう理由があるからです。

 このようにうまくアルコールを処理する能力を備えているといっても、やはり長年大酒を飲んでいるとついには肝臓も傷んでしまいます。大酒を飲んで、肝硬変になる人もいるし、「あいつは、わしよりももっと大酒を飲んどるのに、わしより肝臓は元気でピンピンしとる」という人もいるし、「あいつはわしよりも少ない量しか飲んどらんのに、わしより肝臓が悪くなってへばっとる」という人もいます。アルコールによる肝障害の進行には個人による多様性があり、遺伝子的にどのように規定されているか、興味のあるところです。一般的に女性は男性よりアルコール感受性が強く、より少ない飲酒量で肝障害が進行します。最近女性がぐいぐいとお酒を飲んでいるのに出くわす場面が少なからずあります。昔、アルコールによる肝障害を研究していた筆者には、「お嬢さん、そのあたりでやめた方が体にいいですよ」と言いたくなるのは......。

商工ふくやま2003年8月号掲載