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日焼けは良い?悪い?(紫外線の皮膚への影響)

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健康チェック

福山市医師会が毎月お届けする、あなたの健康チェックのためのコラムです。


NO.64
2003年10月号
日焼けは良い?悪い?
(紫外線の皮膚への影響)


福 山 市 医 師 会
いわさき やすまさ
岩崎 泰政
(皮膚科・形成外科)


 心地よい秋の到来ですが、今年は冷夏の後に残暑の厳しい夏でした。さて私が小学生の頃は夏になると海やプールで競って日焼けをして真っ黒になっていた記憶があります。つい最近まで「小麦色の肌」は健康の証のように考えられ、母子手帳にも日光浴が推奨されていました。実は我々が一生に浴びる紫外線の半分は高校生までに浴びてしまうと考えられています。近年、紫外線の弊害が取りざたされるようになり、多くの皮膚科医は「紫外線が百害あって一利なし」との考えに変わり、ついには母子手帳から「日光浴」の文字も消えてしまいました。あえて一利あるとすれば骨を丈夫にするビタミンDの合成に関わるぐらいですが、これも日常生活で十分です。
 我々が生活の中で浴びる紫外線はほとんどが太陽からのもので、波長が長い方からA、B、Cに分けられ、人体には波長が短いほど悪影響を及ぼします。しかし波長の最も短い紫外線のCはほとんどオゾン層に吸収されるため、問題になるのはBやAです。オゾン層が破壊されるとそれらの危険な紫外線も地上に降り注ぐこととなります。とくに紫外線のBはAの1,000倍程度の影響力があり、また細胞の核の中にある遺伝子情報を担っているDNAに吸収され傷を付けます。すると皮膚は赤くなったり、老化に伴うシミやしわができたりします。ヒトの細胞はその傷を修復する働きがありますが、紫外線に当たり過ぎ何回も傷が付いているうちに、修復過程で間違いが起こると突然変異を起こし、皮膚がんが発生します。
 皮膚がんにかかる率は、日本人では人口10万人当たり約10人ですが、米国の白人は232人、さらに紫外線が強いオーストラリアは800人と非常に多く、逆に米国の黒人は3.4人と少なく、皮膚の色が濃いほど紫外線による皮膚がんの発生が抑えられることがわかります。さらに10歳までにオーストラリアに移民した人は、10歳以降に移民した人に比べ生涯で皮膚がんにかかる率が3倍以上高いことが明らかになりました。また70歳以上になると極端に皮膚がんの発生が増えます。とくに多いのは日光が当たりやすい顔や手の甲の皮膚が少し固くなりかさかさし、やや赤くなった病変で皮膚がんの前段階の「日光角化症」です。そのままにしておくと大きく盛り上がったり、転移し命にかかわる可能性がある「有棘細胞がん」に進行します。また転移はしないが黒くてつやつやし、中央が掘れてくる「基底細胞がん」や、非常に転移しやすくホクロの癌といわれる「悪性黒色腫(メラノーマ)」の一部も顔に生じ紫外線に影響されるため注意が必要です。
 実際に紫外線から皮膚を守るには日傘や帽子、長袖の服を着用するのが効果的ですが、顔や手の甲は難しく日焼け止めクリームを塗るのが良いでしょう。最近はクリームに紫外線を防ぐ度合いである「SPF」や「PA」がはっきり表示されています。普段はSPF10で十分ですが、野外のレジャーなどにはSPF20や30、海水浴にはSPF50が良いでしょう。紫外線が最も強いのは8月、1日では太陽が真南に来る正午で、それらを中心に紫外線対策が必要です。
 オゾン層を破壊するフロンなどを規制するモントリオール議定書は2050年までに2000万件の皮膚がんの発生を防ぐ効果があるとしています。紫外線に対する啓蒙は医師だけでも可能ですが、地球温暖化やフロンを含めた環境対策は全世界的な経済界も巻き込んだ運動が必要です。我々の子どもや孫の健康な皮膚を守るためにまずは身近なところから認識していきましょう。

商工ふくやま2003年10月号掲載