肥満にもいろいろある 人間の脂肪には、皮下に沈着する脂肪(皮下脂肪)と、腹腔内臓器に沈着する脂肪(内臓脂肪)があります。皮下脂肪主体の肥満は、ヒップ径が大きくなるのが特徴で洋梨型肥満と呼ばれ、また腹腔内臓器主体の肥満は、ウエスト径が大きくなるのが特徴で、りんご型肥満と呼ばれています。一見同じ脂肪ですが、実はこの2つの肥満には健康上大きな差があるのです。内臓脂肪からは動脈硬化を促進する様々な化学物質が放出されているのです。 メタボリック症候群とはどのような病態でしょう 米国では50年前から動脈硬化の危険因子の検討を行い、高コレステロール血症、高血圧、喫煙、糖尿病などを単独の危険因子として特定していました。しかしコレステロールも高値でなく、糖代謝異常も境界型程度であるのに高度に動脈硬化が進行する一群があり、この病態に対して1987年ごろに「シンドロームX」「内臓脂肪症候群」といった名前でその特徴が提唱されました。その特徴とは、上半身肥満(内臓肥満)、耐糖能異常、高血圧、中性脂肪の高値があり、非常に高率に重症の動脈硬化を合併し、心筋梗塞、脳梗塞を発症し死にいたる病態で、この事から「死の四重奏」と呼ばれました。その後この病態は内臓脂肪肥満のため、高インスリン血症、インスリン抵抗性が惹起され、これにより、高血圧、脂質代謝異常、糖代謝異常が生じており「インスリン抵抗性症候群」とも呼ばれました。現在メタボリック症候群という名で統一されています。個々の動脈硬化の危険因子が個別に存在するのではなく、内臓肥満という1つの存在が原因となり、動脈硬化の危険因子が重複する病態と考えられます。内臓脂肪の測定は、正確にはCT検査で臍レベルで呼気時に撮影し内臓脂肪と皮下脂肪の面積を測定する方法があります。ウエスト径で男性85㎝女性90㎝は内臓脂肪100cm3に相当しています。 メタボリック症候群と診断されたら 脂肪が蓄積された原因はこれまでのエネルギー過多の食事と運動の不足にあります。生活習慣を改善する事が基本です。治療は、諸悪の根源である内臓脂肪量を減らす事が最重要です。脂肪を燃やすためには有酸素運動(脈拍100回/日程度でうっすら汗をかく程度の運動)を行います。15分続けた頃から脂肪が燃えますので30分程度の運動が望まれます。同時にすでに起きている循環代謝の異常については内臓脂肪が改善されるまで待つわけにはいきません。専門家受診がぜひ必要です。 メタボリック症候群診断基準 必須項目: ウエスト周囲径 男性≧85cm 女性≧90cm
選択項目: ①高TG血症≧150mg かつ、または 低HDL-C<40mg/dl ②収縮期血圧≧130mmHg かつ、または 拡張期血圧≧85mmHg ③空腹時血糖≧110mg
必須項目に加え選択項目2項目以上でメタボリック症候群と診断 |