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〜Topics 〜 新型コロナウイルス感染症の確認検査

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現在、新型コロナウイルス感染症の確認には遺伝子検査や抗原検査が実施され、いずれも行政検査として保険が適用されています。これらの検査で陽性となった場合に、検体採取時点での感染が確定します。同様に、陰性の場合でも、検体採取時点での陰性であり、「新型コロナウイルス陰性を保証」するものではありません。
新型コロナウイルスに限らず、どんな検査でも100%完全なものは存在しません。それぞれの検査法や使用される検体の特徴を理解しておくことが重要です。

●検査の種類は?

【遺伝子検査】

PCR法
新型コロナウイルスに特徴的な遺伝子(RNA)を増やして、検体の中にウイルスが存在するかどうかを確認する方法です。わずかなウイルス遺伝子を検出できる感度が比較的高いとされる検査です。結果は2~4時間で判明します。
多くの機関で実施されているリアルタイムPCR法は、PCRを繰り返しウイルス遺伝子を増やしていく過程で、遺伝子がある一定量(しきい値)に達した時のPCRの繰り返し回数(Ct値)をもとに、検体中のウイルス遺伝子の数を推定することができます。低いCt値を示す場合は、ウイルス遺伝子数が多い(ウイルスが多い)ことが推定され、Ct値が高くなる場合にはウイルス遺伝子数が少ないと判断することができます。Ct値は、陽性者の感染性を正確に評価するうえでの重要な指標のひとつとして期待されています。

LAMP法
PCR法に比べて少し感度が劣りますが、新型コロナウイルスの遺伝子を1時間足らずで検出できる迅速で簡便な検査法です。LAMP法は唾液など検体の種類によっては偽陽性となることが指摘されています。検査法に適した検体を使用することが大切です。

【抗原検査】
新型コロナウイルスを構成するタンパク(抗原)に、特異的に反応する抗体を用いてウイルスを検出する検査法です。抗原検査には、定性検査と定量検査の2種類があります。

定性検査
インフルエンザウイルスで知られるイムノクロマトグラフィー法を利用した方法です。発症から9日目以内の症状のある被検者の鼻咽頭および鼻腔ぬぐい液を用いた場合に適用が認められ、陽性の場合は確定診断になります。陰性の場合は、発症2~9日目以内であればPCR検査での確認は必要なく、確定診断とすることができます。定性検査は、検出に一定以上のウイルス量を必要とすることから、無症状者に対するスクリーニング目的での使用は認められていません。30分くらいで結果が判明することから、クリニックや外来等でのスクリーニング検査として有用です。最近、イムノクロマトグラフィー法は、粘ちょう性の高い検体を用いた場合には偽陽性を示しやすいことが報告されています。

定量検査
ウイルスのタンパク(抗原)の量を測定することができ、遺伝子検査と同程度の感度が得られるとされています。発症から9日目以内の症状のある被検者であれば鼻咽頭および鼻腔ぬぐい液、唾液で検査できます。定性検査と異なり、症状のない被検者の鼻咽頭ぬぐい液および唾液を用いた検査としても認められています。

【抗体検査】
抗体検査は、新型コロナウイルスを構成するタンパク(抗原)に対する抗体ができているかどうかを調べる検査です。陽性となる時期は、症状が出てから1~3週間後とされていますが、たとえ抗体が陽性であっても、体内からウイルスが排除されたことを証明することにはなりません。抗体検査は、現在は保険適用外となっています。
抗体検査で"わかること、わからないこと"を表1に示します。

表1 抗体検査の結果の解釈 "わかること、わからないこと"

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●検体の種類と特徴は?

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★鼻咽頭ぬぐい液
新型コロナウイルスは上気道から感染するため、感染初期には、最も標準的で信頼性が高い検体とされています。医療従事者が採取するため、飛沫に曝露される危険性があり、感染予防策を徹底したうえで、適切な部位から採取することが重要です。

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★鼻腔(鼻の入り口)ぬぐい液
医療従事者の管理下であれば、被検者自身が採取でき、医療従事者が採取した場合の鼻咽頭ぬぐい液と同様に有用とされています。検出感度は鼻咽頭ぬぐい液に比べやや劣るとされていますが、実用性と医療者の感染予防の面から有用な検体です。

★唾 液

医療従事者の管理下であれば、被検者自身が採取できる利点があります。検出感度は鼻咽頭ぬぐい液と同程度とされ、また、採取手技に左右されない利点もあります。ただし、飲食や歯磨き、うがい直後の採取はウイルスの検出に影響を与える可能性があり、避けるべきです。
検査法と対象者、検体の関係を表2に示します。

表2 新型コロナウイルスの確認検査、対象者と検体の種類

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●検体の採取と感染対策は?

新型コロナウイルス感染症の確認のために検体を採取するときは、表3に示す感染防御が必要です。

表3 各種検体と感染防御

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<参考資料>

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針 第一版,厚労省、国立感染症研究所、感染症関連学会 等
  • COVID-19検査法の結果および考え方,日本感染症学会
  • SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン,厚労省

※本資料は2020年10月現在の情報をもとに作成しています。