Home > 健康支援センター 検査 > トピックス > 〜Topics 〜 PCR ピ~シ~ア~ル って なに?

〜Topics 〜 PCR ピ~シ~ア~ル って なに?

ダウンロードはこちらから ⇒ PDF[850KB]

topics_pcr_001.gif

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大により、最近では、PCRという言葉を聞かない日がないくらい日常的になっています。
PCRは、Polymerase Chain Reaction (ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字をならべた略語です。
ところで、PCR、どのような検査なのでしょうか? なにを検出するのでしょうか?

contents
感染症の診断で活躍するPCR
DNAとは? RNAとは?
PCR、どんな検査?
新型コロナウイルスのPCRは?
結果の解釈で注意することは?

感染症の診断で活躍するPCR
感染症の診断、治療においては、その原因となっている病原体を明らかにし、どのような治療を行うかを判断する必要があります。そのためには、感染病巣を推定し、関連する検査材料(喀痰、尿、血液など)を採取することから始まります。次いで、顕微鏡で観察したり、培養することで感染症の原因となる病原体を確定し、どのような薬が有効かを調べます。一方、世の中には培養が難しい微生物も数多く存在し、ウイルスもその一つです。ウイルスが疑われる感染症では、培養の代わりに免疫学的検査や、個々のウイルスに特徴的な遺伝子、すなわちDNAやRNAを直接検出することでその種類を確定します。PCRは検査材料中に存在する微生物の遺伝子を検出する検査なのです。

DNAとは? RNAとは?
DNAはデオキシリボ核酸とも称され、遺伝情報、すなわち、生命体を形づくる設計図のような物質としてヒト、動物、植物、細菌などに存在しています。糖、リン酸および塩基から構成される相補的な二重らせん構造(二本鎖)をとり、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)の4種類の塩基は、アデニンはチミンと、グアニンはシトシンと必ずペアを組んで結合しています。細胞が分裂していく際には、このペア構造に基づいてDNAが合成されていきます。一方、リボ核酸と呼ばれるRNAは、DNAとは異なる一本鎖構造をとり、塩基はチミン(T)の代わりにウラシル(U)が存在します。ヒトをはじめ、細菌やアメーバなどの原虫類にはDNAとRNAの両方が存在していますが、ウイルスはどちらか一方のみを持ち、DNAウイルスあるいはRNAウイルスと呼ばれます。

PCR、どんな検査?

topics_pcr_005.gif
PCRは、感染症患者から採取された検査材料中の微生物のDNAやRNAを取り出す抽出操作から始まります。次に、その微生物にしか存在しないDNAの特定の領域を探し出して大量に増やすのです。PCRで最も重要な役割を果たすのが、目的とする病原体に特異的な領域を挟むように結合する人工的に作成されたプライマーと呼ばれる2本の短いDNA断片です。この2本のプライマーが協力し合って、

topics_pcr_006.gif

検査材料中の病原体から増やしたいDNA領域を探し出し、挟み撃ちをするように結合します。実際のPCRでは、①熱をかけることにより二本鎖のDNAを一本ずつに切り離し、②それぞれの一本鎖DNAのその微生物にしか存在しない特定の領域を挟むようにプライマーを結合させます。次いで、③DNAポリメラーゼという酵素によりプライマーと結合したDNAを引き伸ばすことでDNAは2倍になります。④リアルタイムPCRという機器を用いて①~③の反応を30回程度繰り返すと、目的とする微生物に特徴的なDNA領域を2時間足らずで10億倍もの数に増やすことができるのです。増えたDNAは検出装置を用いて確認し、目的とする病原体が確定されます。PCRは、汎用性の高い技術であり、遺伝子診断、親子鑑定あるいは犯罪捜査などさまざまな分野で利用されています。

新型コロナウイルスのPCRは?
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はRNAウイルスの仲間です。PCRはDNAを増やす技術ですので、RNAを直接増やすことはできません。このため、新型コロナウイルスをPCRで検出するためには、逆転写という操作でRNAをDNAに変換する必要があります。新型コロナウイルスは、逆転写(RT:Reverse Transcription)に続いてPCRを行うRT-PCRと呼ばれる技術を用いて検出されています。

結果の解釈で注意することは?
PCR検査(遺伝子検査)の感度は一般的には高いという認識がありますが、決してそうではありません。新型コロナウイルスの場合、症状のある方で70%程度とされています。つまり、感染している人の3割は見逃されることになります。ウイルス量が少ないと考えられる無症候の感染者は30%とさらに低くなり、結果は偽陰性になる恐れもあります。このように「PCR陰性」という結果は、安心、安全を担保するものではないのです。

感染症の診断はその原因となる病原体を検出することが最も重要です。しかし、PCRは細菌やウイルスそのものを検出しているのではなく、遺伝子、すなわちDNAやRNAを検出しているにすぎないのです。PCRは、死滅して病原性の無くなった細菌やウイルス、紛れ込んだDNA断片(コンタミネーション)によっても陽性に判定されることがあり注意が必要です。

PCRは、十分な知識と熟練した技術が要求される極めてデリケートな検査なのです。