12.胸のへこみ

お母さんが知っておきたい子供の病気
外科編

はじめに

  1. おなかが痛い
  2. 嘔吐
  3. 血便
  4. そけいヘルニア・陰嚢水腫
  5. 臍ヘルニア
  6. 包茎
  7. 停留精巣
  8. 睾丸捻転症
  9. 便秘
  10. 白い便
  11. お腹が大きい
  12. 胸のへこみ
  13. 腕を動かさない
  14. やけど
  15. 異物誤嚥
  16. 皮膚に見られる孔(瘻孔)

あとがき

 胸のちょうど真ん中あたりがこぶしが入るくらいに凹んでいるこどもが1000人に7名ぐらいの頻度でいると言われています。これは漏斗胸(図13)と呼ばれる疾患で、両親や兄弟にも同じような異常が見られることから遺伝体質も示唆されていますがはっきり分かっていません。この異常を持つこどもは一定の傾向があり、すなわち猫背、扁平胸、季肋部の突出、上腹部膨満、気管支炎への易罹患傾向などで特徴づけられますが、日常生活に支障を来すほどの状態になることはほとんどなく、ただ前胸部の変形による精神的な影響が一番の問題点です。だから軽度の漏斗胸や特に女の子の場合には将来乳房発達とともに目立たなくなることからあまり外科的な治療は差し控えるようにしています。しかし、前胸部というのは男の子にとって隠すことのできない場所ですし、端から見るより本人の精神的負担は大変大きいものがあるためやはり手術すべき例も少なからずあります。漏斗胸はくぼんだ肋軟骨が異常に長く成長しているため以前はこの長い肋軟骨を切除してへこみを矯正する方法をおこなっていましたが、この方法ではどうしても前胸部に手術創をつけざるを得ませんでした。最近のことですが、傷の目立たない側胸部に小さな皮膚切開をおき、この創から胸郭を持ち上げるように湾曲させた金属バーを胸骨(胸の前真ん中を縦に通っている骨)の後ろに通過させることによりその彎曲で一気に凹んだ胸壁を持ち上げ矯正してしまうNUSS法(図14)という手術が普及してきました。これは手術時間も1時間ほどに短縮でき、入院期間も10日間ほどで済み、以前の方法に比べ多くのメリットのある方法です。手術後2,3年すれば挿入していた金属バーを抜きますがそのときにはしっかりと肋骨や胸骨が矯正されており、最陥凹はないとされています。(図15)手術は自然治癒が期待できなくなる3歳以上が対象になりますが、入学前の子から小学生ぐらいの児が骨も軟らかく一番手術がやりやすいように思います。

 この漏斗胸とは反対に胸の中央が飛び出してくる鳩胸という異常があります。これも程度が激しく、気になる場合は外科的に修復しますがこの疾患には漏斗胸の時のNUSS法のような簡便な方法は未だなく、やはり前胸部への皮膚切開が避けられないのが現状です。

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