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4.そけいヘルニア・陰嚢水腫

お母さんが知っておきたい子供の病気
外科編

はじめに

  1. おなかが痛い
  2. 嘔吐
  3. 血便
  4. そけいヘルニア・陰嚢水腫
  5. 臍ヘルニア
  6. 包茎
  7. 停留精巣
  8. 睾丸捻転症
  9. 便秘
  10. 白い便
  11. お腹が大きい
  12. 胸のへこみ
  13. 腕を動かさない
  14. やけど
  15. 異物誤嚥
  16. 皮膚に見られる孔(瘻孔)

あとがき

 いわゆる「脱腸(だっちょう)」のことです。胎児の時にはもともと背中の方にあった睾丸が徐々に陰嚢の方に下降してきますが、その通り道に当たるところに腹膜の一部が鞘(さや)のように飛び出してきます(腹膜鞘状突起―ふくまくしょうじょうとっき)。これはふつう生まれた直後に閉鎖しますがそれが閉じないままになってしまうとそこに腹腔内から腸が脱出してくるようになることがあります。これが脱腸と呼ばれるものです。(図5)

この鞘状の袋の中に水がたまってくるのが「陰嚢水腫」や「精索水腫」で、その起源は同じものです。よく「脱腸」は男の子にしかないといわれますがそんなことはありません。女の子にも同じように見られます。女の子の場合ヘルニアの出口の近くに卵巣があるため、腸と同時に卵巣が脱出してくることもあります。生まれつきの袋とはいっても腸が降りてこなければ外からはヘルニアがあるかどうかわかりません。腸が降りるようになって初めてヘルニアに気づくので突然にヘルニアが起こったように思われます。実際には少しずつ押し広げられて次第に大きくなってゆくことが多いようです。一番多いのはお風呂に入ったときや大泣きした後に足の付け根のところがふっくらと盛り上がっているのに気がつかれます。ふつう痛みもなく、ふくらみも軟らかく、横に寝かせると自然に消えてしまいます。ふくらんだところを押さえますと指に「グジュグジュ」といった感触があり、それと同時に触れていた固まりがスッと消えるのがわかります。このように脱出した腸が戻る場合は何にも心配はないのですが、まれに力一杯泣いた後や強い腹圧がかかったときにいつになく大きく腸が出てしまい、戻れなくなってしまうことがあります。これが嵌頓(かんとん)といわれる状態です。この時にはヘルニアの出口(門)のところで腸管とともに腸間膜が締め付けられ、そこを通っている血管の中を血液が通ることができなくなります。こういう状態が数時間続きますと、腸は腫れ、出血し、さらに進めば壊死(えし)に陥ってしまいます。このような怖い合併症は滅多に起こりませんが、乳児以下の赤ちゃんには頻度が高いといわれています。この合併症のあまりに大きい損を考えると、まだ嵌頓していないときに早期手術に踏み切るのがよいとされています。昔いわれていたようなヘルニアバンド(脱腸帯)は効果がなく、危険が多いので今は使われておりません。治療は手術ですが、こどもの外科の中では一番頻度の高い手術で、もっとも安全な手術の一つです。子どもですので手術に際しては腰麻酔でなく全身麻酔のもとにヘルニア門のところを糸で結紮する(くくる)高位結紮術(こういけっさつじゅつ)という方法が行われます。傷も1−2cm程度で30分もかからない手術ですが、この方法で子どものそけいヘルニアは確実に治すことができます。

 「陰嚢が大きくなった」と先ほどと同じような症状のあらわれ方をしてくる病気に、前述の「陰嚢水腫(精索水腫)」(女の子ならヌック水腫と呼ばれます)があります。これは乳児の早い時期にはかなりの頻度で見られますが、そのほとんどは1歳までに自然に治ってしまいます。時に治ったように見えてしばらくして風邪などを契機に再び大きくなる例もあります。これはそけいヘルニアと違って出ているのは水だけですので怖い合併症の嵌頓はなく、すぐに手術に踏み切る必要はありません。でも2,3歳になっても治らないものや大きなものは手術の対象になることもあります。この2つの病気の見分け方は押さえて消えるかどうかがポイントですが、懐中電灯で大きくなった陰嚢に光を当てて、光がよく通り、皮膚を通してピンク色に見えるようなら水腫ということができますが、やヽ素人には判定がむずかしいかもしれません。やはり、専門の病院に行って診察を受けておくのが安心です。

一口メモ

日帰り手術について

そけいヘルニアなどの簡単で合併症の殆どない手術に対して、朝手術を受け、夕方自宅に帰る日帰り手術が普及しています。もちろん全身麻酔ですので、食事の時間やかぜなどの合併疾患については注意が必要ですが、病院で泊まらなくてもよい分、本人や家族の負担が軽く、また費用も幾分安いといったメリットがあり、これからもいっそう、他のいろいろな疾患にも適応が拡がってゆくでしょう。

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