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【感染症情報】ラムゼイ・ハント症候群

【いきいき健康メール】(2022年5月号)
2022年5月10日発行号
◎ラムゼイ・ハント症候群 帯状疱疹ワクチンについて昨年10月号で詳細に記載され、また掲示物、TVのCMでもよく目にするようになりました。 水痘・帯状疱疹ウイルス(以下VZV)が顔面神経、内耳神経で再活性化して耳介の帯状疱疹、顔面麻痺、難聴・耳鳴・めまいの三主徴を発症することをラムゼイ・ハント症候群(以下ハント症候群)といいます。顔面神経麻痺は年に10万人あたり40~50人に発症し顔面神経麻痺のみのベル麻痺(単純ヘルペスウイルスが関連)で60%と一番多く、次いでハント症候群が15%を占めます。 顔面神経麻痺、帯状疱疹、難聴・めまいがそろった完全型が60%、顔面神経麻痺、帯状疱疹のみの不完全型が40%で、顔面神経麻痺単独(無疱疹性帯状疱疹)もあり、稀に嚥下や発声に関する他の神経も障害されます。一般的には一側の神経痛様の強い耳痛、側・後頭部痛で始まり続いて同側の耳介、外耳道の帯状疱疹、顔面麻痺がみられます。 発症した場合には早急な治療(抗ウィルス薬とステロイド剤の使用、場合により顔面神経減荷術)を必要としますが、顔面麻痺の程度はベル麻痺に比べ高度な例が多く治癒率もベル麻痺の90%以上に対してハント症候群では50~70%と低いと言われています。後遺症としては顔面拘縮、病的共同運動(瞼と閉じると同時に口角が吊り上がる等)、ワニの涙(食事時に涙が出る)等があります。 ただしベル麻痺と違ってハント症候群ではワクチン接種による予防ができます。 以前に比べて特にコロナ禍になり顔面・頭部帯状疱疹、ハント症候群を診る機会が明らかに増えました。 増加の要因については色々と言われていますが、一つには乳幼児での水痘ワクチンが定期接種されるようになり小児の水痘は減少した反面、成人のVZVに暴露される機会が減り自然なブ-スタ-効果がなくなったことが大きく関与しているとされています。 今後も高齢化社会が進み、またコロナ禍で人との接触が減ることでさらに帯状疱疹、ハント症候群が増加することが予測され50歳以上での帯状疱疹ワクチンの積極的な接種が望まれます。 文責:福山市医師会 感染症対策委員 岡本 宏司