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【今月のトピック】どうして人はウソをつく?

【いきいき健康メール】(2024年5月号)
2024年5月10日発行号
◎どうして人はウソをつく? どうして人はウソをつくのでしょう?ウソの歴史には様々なエピソードがあります。たとえば、旧約聖書に登場する話では、カインが弟アベルを殺した後、所在を問われたカインが「知りません。私は永遠に弟の監視者なのですか?」と答えたことが「人類の最初のウソ」とされています。日本の古事記にも、神がウソをついた話が記されています。 言語哲学者の和泉悠氏は、「嘘とは、正しくないことをいうことだ。嘘は人をだますことだ」と述べています。しかし、ウソは必ずしも全て悪いわけではありません。たとえば良いウソは、サプライズ誕生日パーティーの計画を隠すためのウソや、「大丈夫だよ」「きれいだよ」と相手を安心させたりする場合です。一方で悪いウソは、自分の利益追求のためや、相手に害を与えるものです。 私はウソをついたことがない、と思っている人も、実は日常生活ではウソとは隣り合わせです。気になっているけど「気になりません」、怒っているけど「怒っていません」、この味どうですか?「美味しいです」。こころあたりはありませんか?本当のことばかり正直に相手に言っていると、相手を怒らせてしまったり、傷つけたりすることもありますから、潤滑油として悪気なくウソをついていることはあると思います。一方でウソはいつかバレます。ウソはいつかバレます。 私は治療することが仕事なので、ウソがバレた時の処方箋をここに記します。それは誠実に謝罪し、誤りを認めることです。ウソが見抜かれると、見抜いた相手はその人を無能であると判断する傾向があると、心理学の研究では繰り返し示されています。ウソはウソを呼びます。ウソがバレた際には、最終的には誠実さと正直さ、他人を尊重する態度が次の展開の分かれ目になります。「ごめんね、言えなかったの」。これで許されるかは、日頃からの人間関係が第一なのですが、本人には誠実に謝罪することが求められ、謝罪を受ける側には一緒に乗り越えようという気持ちが大切です。 人間は間違いをしてしまう生き物です。間違いを「ゆるし」、対話を続けていくことが人間や社会を成熟させるのだと思います。勇気を出してカミングアウトした人に対して、立ち直るチャンスを与えられる社会になりたいですね。「叩くより、たたえ合おう」。私が好きな言葉です。 文責:福山市医師会 広報委員 精神科医 大林 芳明