2024年12月号
最近の感染症情報
現在、福山市内にて小児の間で流行している感染症を、感染頻度の高い疾患順にお知らせします。
- 感染性胃腸炎 減少傾向
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 増加傾向
- インフルエンザ 横ばい
- 手足口病 減少傾向
- マイコプラズマ肺炎 横ばい
- 新型コロナウイルス感染症 横ばい
- 突発性発しん 横ばい
続いて、咽頭結膜熱・水痘などが少数報告されています。
*伝染性紅斑とは・・・
伝染性紅斑はリンゴ病とも呼ばれます。現時点では福山では流行していませんが、他の地域での流行が報じられています。毎年流行する感染症とくらべるとなじみが薄い感染症ですね。ここで紹介しますので、流行に備えておいてください。
伝染性紅斑はヒトパルボウイルスB19による感染症です。幼児~小学生に多い感染症で、ほおがりんごのように赤くなるのが特徴です。ウイルスに感染すると一週間ほどで発熱など軽いかぜのような症状がでます。そして感染から二週間ほど経つと両方のほおが赤くなり、次いで腕や足にレース状の赤い発疹が現れ、その後自然に回復します。特別な治療が必要となることは少なく、治療する場合も症状に応じた治療が行われます。また、感染しても症状が軽かったり、無症状ですんでしまったりすることもあります。1回感染すると免疫がつくため、2回以上かかることはありません。
しかし免疫がない場合にはおとなもかかることがあります。妊娠中(特に妊娠初期)に感染した場合は、まれに胎児の異常(胎児水腫)や流産が生じることがあるので注意が必要です。
感染力の強い時期は特徴的な発しんが現れる前になりますが、その時期は伝染性紅斑の診断がついていない場合がほとんどです。そのため伝染性紅斑とわかったうえでの予防は非常に難しくなります。予防接種もありません。予防としては手洗い、咳エチケットに効果がありますが、感染者の区別は難しいため周囲での発生がみられるようになった時には、妊娠中あるいは妊娠の可能性がある女性は、かぜ症状のある方との接触をなるべく避けるようにこころがけましょう。
今月のトピック
ことあるごとに嘔吐をする子供
私は子供の頃、旅行に行くたびに体調を崩し嘔吐を繰り返していました。病院で点滴をしてもらうと良くなっていた記憶があります。小児科の勉強をしている時に周期性嘔吐症という病気を知り、自分が子供の時に事あるごとに嘔吐を繰り返していたのは周期性嘔吐症が原因だったのだと合点が行きました。
周期性嘔吐症は日常的には無症状であるにも関わらず、数日間の嘔吐発作を周期的に繰り返すことが特徴です。発作の誘因としてストレス、感染、疲労などがあります。風邪をひくたびに嘔吐をしたり、運動会や遠足などイベントの後に嘔吐することが多い場合は周期性嘔吐症の可能性があります。症状が表れたら安静にし、ジュースや飴、ラムネなどで糖分を補給が有効なことがあります。水分摂取もできないような場合は医療機関で点滴をするのが良いでしょう。10歳を過ぎる頃から症状は出なくなり自然軽快するケースがほとんどですが、まれに大人になっても症状が続くことがあります。
胃腸炎やその他の消化器系の病気などの鑑別も必要ですが、普段は元気なのに、ことあるごとに嘔吐を繰り返す場合は周期性嘔吐症かもしれません。
文責:福山市医師会 学校保健委員 福田 健
おくすり一口メモ
子供の抗生物質の使い方と注意事項(その①)~抗生物質の働きと適応症~ -福山市薬剤師会-
抗生物質は、細菌による感染症を治療するための薬です。細菌の増殖を抑えたり、細菌を死滅させたりする働きがあります。抗生物質はすべての感染症に効果があるわけではなく、ウイルスが原因の風邪やインフルエンザには無効です。症状が"ウイルス"によるものか"細菌"によるものかは、医療機関の検査を受けないと判定できません。
抗生物質の適応症には、中耳炎、肺炎、咽頭炎、膀胱炎などが挙げられます。子供の場合、免疫機能が未発達なため風邪と一緒に細菌感染症にもかかりやすく、体力的にも早期の治療が求められます。風邪薬と一緒に処方される抗生物質は風邪自体を治す薬ではなく、同時に感染してしまった細菌による感染症を治療するためなのです。
重要なのは、抗生物質が効く病気と効かない病気を理解し、誤った使用を避けることです。例えば、発熱だけでは抗生物質が必要かどうか判断できません。抗生物質を正しく使用しないと治療が遅れたり、副作用につながるため、用法用量を守って服用しましょう。次回は、抗生物質の服用期間や副作用のリスクについて詳しく解説します。