2022年11月号
最近の感染症情報
現在、小児の間で流行している感染症を、感染頻度の高い疾患順にお知らせします。
- 感染性胃腸炎 ・・・・・ 横ばい
- RSウイルス感染症 ・・ 減少傾向
- 溶連菌感染症 ・・・・・ 増加傾向
- 手足口病 ・・・・・・・ 減少傾向
- ヘルパンギーナ ・・・・ 増加傾向
- 咽頭結膜熱 ・・・・・・ 急増
※ 毎年11月ごろから感染性胃腸炎が流行しやすい時期になります。マスク・アルコールによる手指消毒では感染性胃腸炎の予防はできません、石けんでの手洗いを心がけましょう。
食中毒や感染性胃腸炎は一年を通して発生していますが、冬には特にウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎が流行します。少量のウイルスでも手や食品などを介して口から感染し、下痢・嘔吐・腹痛などを起こします。一度感染した人でも繰り返し感染することがあります。子どもや高齢者・免疫が低下した方などは重症になることがありますので特に注意が必要です。感染しても症状が軽い人や症状が出ない人もいますが、症状が出なかった人や病気が治った人も長い時には1カ月ほどウイルスを排出し続けていることがあります。
最近の傾向として生鮮食品にウイルスがいることが原因ではなく、食品を取り扱う人がウイルスを保有していて調理や配膳過程で食品を汚染したことが原因の場合が多いようです。ウイルスによる食中毒や感染性胃腸炎を防ぐためには手洗い・消毒・加熱をしっかりと行いましょう。
石けんでの手洗いは手指に付着したウイルスを減らすためには最も効果的な方法ですので、調理前・食事前・トイレに行った後は必ず石けんで手を洗いましょう。調理器具や調理台は消毒用エタノールではなく次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)や熱湯で消毒しましょう。食品は中心が90秒以上90℃以上になるまで加熱しましょう。
今月のトピック
子供の肥満
子供たちの肥満が問題視されてきています。
ファストフード、コンビニ等、子供たちの周りには豊か過ぎるほどの食環境があり、ゲーム、スマホ、パソコン、車社会等による運動量の低下もあります。
学校健診における肥満度評価においても、年々肥満を指摘される児童が増えてきています。
子供たちの肥満はなぜ問題なのでしょうか。これには以下の問題点が指摘されています。
①小児肥満の多くが成人肥満につながること。②成人になり高血圧、糖尿、高脂血症、脂肪肝等の疾患を起こしやすくなること。③小児期にも生活習慣病が認められること。④骨・筋肉・関節への負担から骨折、筋肉・靱帯損傷、関節炎等を起こしやすくなること。⑤心理的問題として体型への劣等感・中傷、運動能力の低下、消極的な性格になりやすいなどです。
小児期は基礎代謝が活発であり、食事、運動を意識することで肥満の解消が成人に比べ容易と考えられています。
食生活の面では①1日3食をきちんととること。②好きなものばかりでなく偏食をせず、バランスよく食べること。③調理方法に気を付けて油の使い過ぎに注意。④ゆっくりよく噛んで食べる。⑤おやつの量・回数を決めておき、間食を減らす。⑥水分はお茶、水を取るようにしてジュース等甘い飲み物は控える。
運動の面では①休日・昼休みは外遊びの時間を増やしましょう。②お手伝いをしましょう。(お風呂洗い・ごみ捨てなど)③車で送ってもらうだけではなく、可能であれば自転車を使う、自分の足で歩きましょう。
以上のことを子供だけで行うことはできません。家族の協力が不可欠であり、家族にも肥満傾向があれば一緒にダイエットにチャレンジしてあげてください。
文責:福山市医師会学校保健委員 日野二郎
おくすり一口メモ
「腸内細菌」と整腸剤 -福山市薬剤師会-
人間の腸内には約1000種、100兆個の細菌が常在していると言われています。細菌と言えば「病原体」を連想してしまいますが、腸内細菌は消化を助けたり、ビタミンを生成したり、病原体の侵入を防ぐに役立つ「善玉菌」が多く、下痢,軟便は消化吸収に関与している善玉腸菌の働きが弱くなって起きる事があります。そのような下痢に、腸の働きを助ける善玉菌がくすりとして使われます。整腸剤と言われ、「ビフィズス菌」(ラックビー,ビオフェルミンなど)「カゼイ菌」(ビオラクチス)「酪酸菌」(ミヤBM,ビオスリー)などです。
ところが、病原体に感染した際に使われる抗生物質が、善玉菌にも作用することがあり、そのために起きる下痢もあります。しかし、抗生物質と一緒に使われる抗生物質に負けない、特別な整腸薬があります。耐性乳酸菌(エンテロノンR,ビオフェルミンR,ラックビーRなど)で、これらは、下痢,軟便がなくとも抗生物質を服用される場合予防的に予め処方されることがあります。