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【感染症情報】口腔咽頭の性感染症

【いきいき健康メール】(2024年5月号)
2024年5月10日発行号
◎口腔咽頭の性感染症 口腔咽頭の性感染症には梅毒、クラミジア、淋菌感染症、単純ヘルペス感染症、HIV等があります。特にSNSを通じて不特定多数の相手と性交渉する機会が増えたことが10~30歳代を中心に梅毒の急増をはじめ性感染症が増加する一因ともいわれ、耳鼻咽喉科を受診する性感染者数も次第に増えています。 口腔咽頭梅毒の場合に典型例では第1期の口唇の無痛性のしこり、潰瘍、第2期には口蓋垂を中心に蝶が羽を広げるように両軟口蓋、扁桃に拡大融合する乳白色の特徴的な粘膜病変(butterfly appearance)がみられますが、病変は自然に消退するため特に診断前の不用意な抗生剤の使用では短期のうちに消失し以後潜伏感染となり見過ごされることがあります。第2期に病変が性器、皮膚にはなく口腔咽頭に単独出現することもみられ診断は臨床所見と血清抗体検査でなされます。 咽頭のクラミジア、淋菌感染症については性器感染者の10~50%に咽頭感染の合併がありクラミジア、淋菌の同時感染も比較的みられますが、多くは無症状でいずれも特異的な所見はなく、時に咽頭痛、咽頭異常感、頚部リンパ節腫脹で、またクラミジアの場合には上咽頭炎に伴う滲出性中耳炎による難聴で耳鼻咽喉科を受診し診断されることがあります。診断は咽頭スメア検査でなされます。 NHKクローズアップ現代の梅毒特集の調査では女性の性感染症の8割以上が配偶者や恋人の特定のパートナーからの感染という衝撃的な報告がありました。またNHK「新型コロナと感染症・医療情報」サイトでは各県の週単位の梅毒感染動向をみることができ、大都市だけではなく全国的な広がりがよく分かります。もはや性感染症は他人事ではなく身近な病気と捉え地域社会において性感染症への知識、また予防、検査の必要性について更なる普及啓発が望まれます。 文責:福山市医師会 感染症対策委員 岡本 宏司