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【感染症情報】先天性サイトメガロウィルス感染症による難聴・予防

【いきいき健康メール】(2023年5月号)
2023年5月10日発行号
◎先天性サイトメガロウィルス感染症による難聴・予防 経胎盤感染により児に先天異常をもたらすTORCH症候群(T:トキソプラズマ、O:その他・梅毒など、R:風疹、C:サイトメガロウィルス(CMV)、H:単純ヘルペス)の中で妊娠中の母体にCMVが感染あるいは再活性化し起こる先天性CMV感染症が一番多く、最近の出生数からは年間600人前後の乳幼児に難聴、精神運動発達遅滞、てんかん、自閉症等の後遺症が起こると推計されています。なかでも難聴は一番頻度が高く、先天性難聴の中で最も多い遺伝性難聴に次いで約20~25%を占めます。 先天性CMV感染症による難聴は進行性が特徴で出生時のみならず新生児聴覚スクリーニングをPass(パス)し幼児期に遅発性に発症することもあり厳重な聴覚管理が必要とされます。 現在、胎内感染の先天性か産道・母乳感染の後天性かを区別する生後21日以内に採取した新生児尿のCMV核酸検査と聴力精密検査(ABR)で先天性CMV感染による難聴と確定診断されれば、聴覚の改善と悪化抑制を期待し生後2か月以内にバルガンシクロビル内服(抗ウィルス剤 令和5年3月27日適応追加承認)の開始(6カ月間投与)が推奨されています。 CMV自体はありふれたウィルスで通常、幼少期に不顕性感染した後に終生体内に潜伏感染し時に再活性化、再感染することもあります。 現在、有効なワクチンはありません。 妊婦のCMV抗体保有率は陽性70%、陰性30%で、未感染妊婦への感染経路は主に保育園等で水平感染した胎児の同胞の唾液や尿を介するものとされています。 未感染妊婦に対して積極的に感染予防対策を指導することでCMV初感染率が減少したという報告があります。 今まで先天性CMV感染症は未感染妊婦の初感染例から多く発生し重症度も高いとされていましたが、近年の報告では非初感染妊婦(CMV再活性化・再感染)と初感染妊婦とでは同程度といわれ、全妊婦に対しては妊娠早期より、また妊娠希望女性にも「母子感染の予防と診療に関する研究班」のHP(改訂中)や「トーチの会(患者会)」のHP等のパンフレット・ポスター・動画を活用して先天性CMV感染症の啓発、教育をしていくことが勧められています。 文責:福山市医師会 感染症対策委員 岡本 宏司