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【感染症情報】イノシシに関わる感染症について

【いきいき健康メール】(2024年1月号)
2024年1月10日発行号
◎イノシシに関わる感染症について 昨今、2000年代以降、イノシシの個体数が急増していると言われています。 イノシシに関わる感染症の一部についてお伝えします。 1)日本紅斑熱 病原体はリケッチア(Rickettsia japonica)で、病原体がイノシシなどの体内で増殖し、その血液を吸ったマダニが媒介する感染症です。病原体を保有したマダニに刺されて2-8日を経て発症します。治療はテトラサイクリン系抗菌薬が有効です。 広島県では年間約100人の発生報告があります。 2)SFTS(重症熱性血小板減少症候群) SFTSは重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)による感染症です。 治療は支持療法が中心でワクチンや有効な治療薬はありません。 日本紅斑熱と同様に、ダニが媒介する感染症です。イノシシがダニを運ぶ可能性も考えられます。 3)日本脳炎 日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを持った蚊に刺されて約1-2週間後に、約100人から1,000人に一人の割合で発症します。突然の高熱や頭痛、意識障害やけいれんといった脳炎症状を示し、約20%の患者が死亡します。 回復しても約半数の人が後遺症で苦しむ感染症です。 対策はワクチン接種であり、過去の接種歴が不十分な場合などに追加接種が勧められます。 猪はウイルス血症を起こし、吸血に来た蚊を大量に感染蚊にする増幅動物となります。 4)E型肝炎 E型肝炎は食欲不振などの消化器症状を伴う急性肝炎です。病原体のE型肝炎ウイルスに糞便汚染された水から主に経口感染しますが、加熱が不十分なイノシシのレバーや肉の摂食でも感染しています。猪の肉の生食は、他に寄生虫(旋毛虫、顎口虫、肺吸虫、有鉤条虫<いわゆるサナダムシ>)や細菌感染の危険性もあります。十分な加熱前となる食肉加工時や調理時も、意図しない経口や傷を経由した感染に注意が必要です。 文責:福山市医師会 感染症対策委員 眞鍋 明広